【本】裏金街(大久保権八)
第50回江戸川乱歩賞の最終候補まで残った作品。乱歩賞クラスになると最終候補でも刊行されることがあるのです。
続きを読む前に”ランキングはこちら!”
この回の乱歩賞は「カタコンベ」という作品が受賞した。選考も大いに割れたようで選評を読むと受賞は作者の若さが加味されたような印象を受けた。で、実際に他の作品はどうだったのかという興味もある。実際この作品も評価されていたようで受賞に推していた選考委員もいた。しかしここからは文学賞のドラマだ。作品の質が拮抗していた場合、思いも寄らないファクターが明暗を分けることがある。本作の場合は完成度は一番高いと評価されたものの在日朝鮮人に対する作者の姿勢に問題ありとみなされて受賞はならなかった。
刊行にあたりその辺の問題点は加筆修正されたようで僕自身あまり気にならなかった。在日朝鮮人などデリケートなネタだけに文学賞を狙うなら扱いは要注意だ。個人的には在日と部落と天皇ネタは避けた方がよろしいかと思ってる。
さて本作だが内容はタイトルから分かるとおり闇金ものである。主人公の伊崎は神田の駅前で闇の高利貸しを営んでいる。その取り立ては徹底的に厳しく金額の多少に関わらずどこまでも追いかける。しかしそんな彼にも高利貸しができない相手がいた。刑事の成尾だ。違法金利を目をつぶってもらう代わりに無金利で多額の金を貸し出している。「ポチの告白」でも見られる警察の暴挙だ。しかしその成尾が無金利の借金を抱えたまま失踪してしまう。取り立て屋のメンツをつぶされた伊崎は成尾を追うことになるが、やがて公安や北朝鮮の気配につきまとわれるようになる、といったお話。
うーん。乱歩賞の最終候補だけあってそつなくまとまっている。でも地味かなあ。裏金融についてはさほど目新しさを感じない。この手のことは「ナニワ金融道」にも書いてあるからね。主人公が闇金融業者といういわばピカレスク。クールを気取っているけど非情にはなりきれない人間くささが彼の魅力だけど、これもこの手のお話しではありがちだなあ。ヤクザたちの描写もぬるい「不夜城」といった感じ。事件の真相もいきなり公安がからんできて唐突感が否めない。また主人公にどこか作者による安全装置の存在が感じられて今ひとつ緊迫感がない。ピンチに陥っても助けてくれる第三者がひょっこり現れたするご都合主義も興ざめだ。
こう思うと荒削りながら「カタコンベ」の方がインパクトがあった。あちらはケイビングで洞窟パニックだ。ミステリとしてはグダグダだった記憶があるけど、こちらも「カタコンベ」よりはまとまっているけど突き抜けるものがない。そつがなさすぎて面白味に欠ける。
ただ乱歩賞のレベルの高さは実感できた。この年の候補作はおそらく例年と比べればじゃっかん劣ると思われる。それでも受賞できない候補作ですらこのレベルがあるのだ。実際にこうやって刊行されて書店にふつうに並べられてもなんら違和感のない完成度である。最低でも書店に並ぶレベルの完成度が求められるということだ。ますます乱歩賞の敷居の高さを思い知らされてしまったよ。

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
投票クリックおねがいします!!
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 【本】悪意(東野圭吾)(2009.10.28)
- 【本】ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。(辻村深月)(2009.10.08)
- 【本】犯罪小説家(雫井脩介)(2009.10.02)
- 【本】悪夢のエレベーター(木下半太)(2009.09.29)
- 【本】新参者(東野圭吾)(2009.09.23)



コメント