蟹工船 【称号:駄作】

船上で蟹を缶詰へと加工する蟹工船。劣悪な環境で出稼ぎ労働者たちは安賃金で過酷な労働を強いられていた。現場を仕切る監督・浅川の非道な仕打ちに耐えられなくなった新庄は労働者たちをまとめて、立ち上がることに。(MovieWalkerより抜粋)
小林多喜二のプロレタリア文学の最高峰をスタイリッシュ(?)に映像化。この作品を見て世のワーキングプアの皆さんはどう思うんでしょうか??
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若者たちが食い物にされている現代の日本。最近は30代以下の世代をロストジェネレーションと呼ばれているらしい。僕が就職するころは「就職戦線異状あり」なんてノーテンキな映画がリアルに上映されていたバブル真っ盛り。二流の人間がそこそこ名の通った会社に余裕で入社できた。今ではとても信じられないけど入社内定したら車を買ってくれたり海外旅行に連れて行ってくれた会社まであったのだ。給料もよかったし株をやれば猿でも儲かったしボジョレーヌーボーが3万円で当たり前のように売れた時代を生きてきた僕たちからすると今の若い人たちが気の毒でならない。
今の現状を勘案すると若者たちの下三分の一、偏差値にすれば45以下の人たちは老後は生きていけない、ホームレス同然の生活になってしまうんじゃないかとマジで思う。僕たちが老人になる頃は街中にホームレスであふれているようなそんな時代がくるんじゃないだろうか。以前、NHKの番組か何かで今の若者たちの年収分布図を出していたがそれを見て僕は愕然とした。僕もまったくの庶民だけど、貧困層の割合の高さが想像以上だったので驚いたのだ。決して彼らは怠けているわけじゃない。それなりに汗水垂らして働いているわけだ。なのに結婚すらままならない。年収300万円以下では貯金だってできないよ。そんな彼らの多くは不動産を持っていない。退職金だってないわけだから働けなくなった時点でアウトだ。住む家がなければホームレス決定ですよ。その頃には年金や生活保護や医療保険といった福祉だって破綻している。まあ、おそらく年金はちゃんと出るだろうけど、どーせエコ税だの福祉目的税だの少子化対策税だの意味不明な名目の新しい税金システムで徴収されてしまうだけのことだ。子供にだって頼れない。今の子供たちが大人になる頃には少ない若者で膨大な老人を支えなければならない。現実的に無理だと思う。彼らが放棄しないとは限らない。姨捨山。貧困社会には実に合理的なシステムだ。そういう社会がリアルに待っているのかもしれない。姨捨山を「しょーがないね」と黙認されてしまう社会になってしまうかもしれない。
今は僕たちバブル世代のときとは違って夢や希望を持てない、もっとぶっちゃければ若者たちが夢や希望を持ってはいけない時代なのだ。いまだに駅前では微塵も心に響かないオリジナルラブソングを歌っている若者がいる。10年以上前なら「夢を追いかける青年」ということで一定の理解を得られたと思うけど、今はそんな夢を追うこと自体が自殺行為なのだ。なぜなら一度負け組に落ちてしまうとリカバリーがきかない。固定される。それは自分自身だけでなくこれから生まれてくる自分の子供や孫にまで波及するおそれがある。それが現代の貧困の怖さだ。
僕はアラフォー世代だがその世代にも厳然とした格差が出てきている。1000万円2000万円稼ぐ人もふつうにいるし、300万円以下の人たちもかなりいる。妻と子供がいて世帯年収300万円や400万円でどうやって老後の生活資金を貯めていけるのか。そりゃあ娯楽や教養を生活の中から一切排除すればできないことはないかもしれないけど、そんな人生に何の価値があるというのか。
今、まだこの世の中に悲壮を実感できないのは彼らがまだ若いからだ。本当の悲劇は20年後30年後に表れる。そんな若者たちが小林多喜二の「蟹工船」に共感しているという。書店に行けばわかるけど80年も前の作品が一番目立つ棚に平積みになっている。バカ売れしているらしい。そーなれば商魂たくましい映画産業が動かないわけがない。さっそく映画化しようぜというわけだ。
SABU監督の手がけたこれが実に駄作だと思う。中途半端なアート志向がこの作品の本質であるプロレタリアートを打ち消している。むしろ思想もメッセージもない単なるファンタジー映画だ。そう割り切って鑑賞できるのならそれなりに見ることはできるクオリティかもしれない。だけどそれを「蟹工船」でやってどーすんのって話である。とはいえ一応強いメッセージはある。しかしそれはどーにも心に響かない陳腐な精神論だ。松田龍平演じる主人公がラストで声高にアジテーションする。
そのメッセージを今の若者たちが聞いてどう思うだろうか。今の若者の多くはぶっちゃければ社会の食い物だ。彼らは一部の資本家に消費されているだけの存在。一生懸命働いているのに給料が上がらない。本来もらえるべきお金が資本家や投資家といった人たちに流れてしまう。国によっては暴動や革命が起こっても不思議じゃない。だけど日本人はそんなことしない。いいように搾取されてそれを良しとするマゾ国民なのだ。だからこそ小泉さんを熱狂的に支持できるんだろう。
劇中、ロシア船のエピソードが出てくる。蟹工船から脱走した主人公たちが漂着したロシア船でもてなされるという話だ。SABU監督はコミュニストなのか。どーもロシア社会主義を肯定的に描いている気がする。今の状況を打破するには日本がロシア化するしかないと主張しているような。たしかに共産主義は理想的だが現実として成り立たないことはそのソビエト・ロシアの歴史が証明してるじゃん。まったくもって意味不明なエピソードだ。こんなところからこの作品の志の低さが窺える。(37点)

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