隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS 【称号:凡作】
実は黒澤明監督のオリジナルを僕はまだ見ていない。黒澤明監督の作品は『天国と地獄』を見る限りたしかにすごいと思うがどうも敷居が高いような気がして鑑賞に至らない。得てして古い名作というのは全般的にそうでさらに知っている役者がいないということもあって若い人たちは名作だと知っていても興味がわかない。そんな人たちが今の旬の役者たちで過去の名作を楽しめるわけだからリメイクもそれなり意義があると思う。
僕はオリジナルをまったく知らないのでリメイクという先入観なしに映画を楽しむことができた。黒沢作品だけにもっと重苦しい映画だと思っていたが予想以上に冒険活劇だ。主人公たちがすごい高い崖から飛び降りても元気いっぱい走り回るシーンなどその荒唐無稽ぶりはアニメや漫画に近い。一般庶民の青年がお姫様を助けるというシチュエーションも『未来少年コナン』『天空の城ラピュタ』『ルパン三世 カリオストロの城』など一連の宮崎駿監督作品を思い起こさせる。
黒澤明監督のオリジナルは知らないがリメイク版はアニメや漫画を楽しむようなスタンスで鑑賞するように出来上がっている。本作にリアリティや時代考証などを求めるのは見当外れだし社会派的なテーマにこだわるような人はおそらく楽しめない。ぶっちゃけ頭の中を空っぽにして楽しむ映画。鑑賞後はきれいさっぱり何も残らない。黒沢作品と比較したらきっとクソミソな評価になるに違いない。巨匠のリメイク版はそういう運命にあるが本作に関してはあまり意味がないように思える。
役者たちもまあまあがんばっている。阿部寛のぎらついた眼光とこけた輪郭はどことなく三船敏郎っぽいし、長澤まさみも今までの鼻についたぶりっ子演技を封印して男勝りなツンデレ御姫さんを無難に演じている。ジャニーズの松本潤もいまひとつ汚れ役に徹しきれていない感じもするが演技の方はそれほど目くじらたてるほどでもない。若い女性客を引き寄せるためにはイケメンの一人はどうしても必要だ。
ストーリーはつまらないメロドラマは最小限に抑えて脱出劇に特化している。これは実に正解で120分近い上映時間はテンポよく展開する。松本潤と長澤まさみがダラダラいちゃついていたら興ざめもいいところだが、庶民と御姫さんという身分の壁もあって二人の恋愛模様はストイックに処理されている。こんな映画でも長澤まさみのあの無駄に甘えた声は聞きたくない。フレッツ光のコマーシャルみたいのはたくさんだ。
アクション映画としてはテンポがいいが、プロットに緻密がない。『ダイハード』のような巧妙な伏線や仕掛けがもう少しあれば佳作のラインを超えたであろうが実力派の役者をそろえているわりに大味な印象が拭えない。そしてなにより主人公たちがどんなピンチに陥っても見ている方としてはさほどピンチに思えないのもスリルに欠ける。ラストで主人公は多くの敵に囲まれてしまうが武装した集団にほぼ素手で対抗していく。それも彼らには格闘技の心得すらない。単に突き飛ばしたり蹴飛ばしたりといったスーパーマリオみたいな攻撃だけで脱出しちゃうのだからハラハラドキドキしろという方が無理だ。(53点)

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