チャーリー・ウィルソンズ・ウォー 【称号:凡作+】
予告編をみると酒三昧、女三昧のお気楽議員のコメディタッチドラマというイメージだが、思った以上にお堅い社会派だったりする。トム・ハンクス演じるチャーリー・ウィルソンズは実在の人物なのでもちろんここで描かれていることもほぼ実話(らしい) といっても国防の機密事項満載なのでどこまでが真実なのかは観客が見極めるしかない。
そのチャーリー・ウィルソンズはソ連をアフガニスタンから撤退させた。といっても彼自身がランボーみたいに乗り込んで戦ったわけでなく極秘裏に予算をつけてアフガンのゲリラを支援したのだ。この映画を楽しむに当たってはアフガン周辺の国際事情をある程度理解していないと厳しいかもしれない。僕自身もそれほど知識があるわけではないのでどの程度楽しめたのか分からない。

本作を楽しむためにはすくなくともソビエトがアフガニスタンを侵攻した当時の中東情勢を理解しておく必要がある。アメリカ、ソ連はもちろんイスラエル、エジプト、サウジアラビア、パキスタンなどからんでくるが彼らは宗教上、歴史上、石油などさまざなま事情で利害や確執がある。まずはどの国とどの国が友好関係、または敵対しているかを知らなければチャーリーと各国首相とのやりとりが分かりにくい。また当時は米ソデタントでアメリカは表立ってアフガンを支援できない。そういった説明があまりされていないので鑑賞前はそれなりの勉強が必要だ。
さらにソ連のアフガン撤退後についても知っておかないと面白さは半減以下だ。アメリカは当時の宿敵ソ連を倒すためアフガンのゲリラたちを支援するわけだがやがては彼らが次の宿敵となっていく。ソ連が撤退した後、内戦が勃発してタリバンが台頭してやがてそれは911テロにつながっていく。つまりアメリカは大金を投じて自分たちを恐怖に陥れたテロリストたちを支援してしまったのだ。さらにアフガンの難民を救うどころか彼らはソ連に蹂躙されただけでなく、その後はタリバンの蛮行、911テロ後は怒り狂ったアメリカの侵攻と短い期間に何度も苦しめられるわけである。結局誰も救われない。だいたいアフガンを救おうとしていたアメリカが侵攻するのだからお話しにならない。ミイラ取りがミイラになるというなんとも皮肉な結果だ。たしかに冷戦は終わったが冷戦以上にタチの悪い戦いを生み出しちゃった。日本人の若者の首チョンパの映像が世界中に配信されたのは記憶に新しい。

この映画ではチャーリーの偉業がどうも読み取れない。彼がしたことといえば予算を勝ち取ったということだけ。だいたい当時のソ連はハリボテの帝国にすぎずアフガンの戦費も響いてあとは勝手に崩壊していく。つまりもともと瀕死状態のソ連に誰がとどめを刺したかというだけのことである。それがたまたまチャーリーだったわけで、「冷戦を終結させた男」と呼ばれるのはあまりに棚からぼた餅のような気がするのだ。その予算獲得もあまりに飄々と描かれているので彼が苦労や努力がさほど窺えない。それどころかどうして彼にここまでの力があったのか今ひとつ分かりにくい。
それにしても思うのは『君のためなら千回でも』でも書いたがアフガニスタン人なんかに生まれなくてよかったということだ。ソビエト崩壊のため犠牲となりタリバンにボロクソにされて味方だと思っていたアメリカすら侵攻してくる。こうなると何が正義なのかよく分からない。最近のアメリカ映画は過去の戦争を反省するような作品が多い。しかし本作は賞賛しているのか皮肉っているのか分かりづらいところが味になっている。「アメリカは正義だけどたまにはこういうチョンボもあるさ」といいたげな映画だった。(56点)

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
投票クリックおねがいします!!
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- ゴールデンスランバー 【称号:佳作+】(2010.02.09)
- インビクタス 負けざる者たち 【称号:凡作】(2010.02.08)
- 食堂かたつむり 【称号:凡作+】(2010.02.07)
- エクトプラズム 怨霊の棲む家 【称号:凡作+】(2010.01.26)
- パーフェクト・ゲッタウェイ 【称号:佳作】(2010.01.24)




コメント