モンテーニュ通りのカフェ 【称号:良作】
フランス映画を見るたびに思うことだがパリという街自体が役者なんですな。ちょっとした路地にたたずむカフェや古本屋さんがそれはもう絵になっている。そこに息づく人々は若者も老人もこだわりのファッションを持っていてただでさえ美しい街を彩っている。そしてポンポン弾むようなフランス語はまるでテンポのいい大阪弁のように心地よく耳に響く。この街では何をやってもうまくいきそうな気がする。ここでは誰もがエコール・ド・パリですよ(意味不明)
本作はそんなパリの片隅にたたずむカフェの周辺で起こる男女の物語。それぞれ著名なピアニスト、オークションに生涯のコレクションを競売にかける美術収集者、昼メロにうんざりしている売れっ子女優などエピソードもバラエティ豊かだ。セシル・ド・フランス(『ハイテンション』で血みどろになった女優さん)演じるカフェで働く女の子がバラバラに起こっているエピソードをつなげていく。狂言回し的な役だが彼女自身にもちゃんとドラマが用意されている。

最近ドラマで草彅剛主演のドラマ『猟奇的な彼女』を見たが全然なってない。たぶんこういうドラマは日本人の役者やスタッフには向いてないんだと思った。テンションとかテンポが日本人の生理になじまないのだ。おそらく『モンテーニュ通りのカフェ』も日本人の役者が東京で演じてもマヌケな映画になってしまう気がする。街並みや言語の違いもさることながらヨーロッパ独特の間の取り方は日本人が表現することは難しい。
だけど不思議なことに日本の下町人情ドラマに通ずるものがある。この映画も何から何までオシャレなのに徹底的な人情ドラマだ。なるほどこの「オシャレ+人情」ドラマはヨーロッパ映画の独擅場なのかもしれない。日本の人情ドラマは今ひとつオシャレさに欠ける。泉ピン子がオシャレに着飾った『渡る世間は鬼ばかり』はちょっと違う気がする。
全体的にフンワリしていて押しつけがましくない人情ドラマが心地よい。ひとつひとつのエピソードは小粒ながら秀逸で夫婦愛、親子愛、自己愛、恋愛を描いている。それぞれ人生の悲哀や挫折を感じながらも幸福を見いだしていくという人情ドラマの典型だがおのおのに味わいが深い。老若男女が出てくるがカフェでの出会いを通してビミョーに人間的成長を見せてくれるのも楽しい。主人公のおばあちゃん役を演じたシュザンヌ・フロン(エディット・ピアフの秘書でハワード・ホークスの愛人でもあったらしい!!)がとっても魅力的だったが本作が遺作となってしまった。合掌。監督さんが『王妃マルゴ』の脚本を担当されていたせいか台詞の中にカトリーヌ・ド・メディチにまつわる話が出てきたのも興味深い。「カトリーヌが嫌い」なんて会話はちょっと強引だった気もしたけど……。
というわけで分かりやすい魅力的なフランス映画ということでオススメです。とってもどーでもいいことなんですが僕のお気に入りのカフェは新宿3丁目にある「トップハウスの書斎」というところ。空中庭園にクラシカルな書斎というイメージでいつまでものんびりしたくなってしまいます。ちなみにGW中は渋谷BUNKAMURAで『パリのカフェ展』が開催されていてそちらも楽しいですよ。(70点)

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