デモンズ 【称号:クソ】

ベルリンの地下鉄駅でシェリルは、顔半分を金属でおおった奇怪な男にカードを手渡された。それは映画の試写状だった。しかし映画が始まると劇中の出来事と同じことが現実でも起こっていた。劇場内はゾンビに襲われてパニック状態となる。
ノストラダムスの大予言が大当たり!! 五島勉も大喜び。まだまだノストラダムスで飯が食えた85年の映画です……。
ダリオ・アルジェント特集も早くも第7弾。前作『フェノミナ』で気持ちを持ち直したのにさっそくこれだよ。とはいえ『デモンズ』ではダリオはプロデューサーです。監督はランベルト・ハーヴァー。そう、イタリアンホラー映画界の巨匠マリオ・ハーヴァーの息子さんです。この映画ができるいきさつとして父と息子との間にこんな会話があったに違いない。
父 「オマエ、今からダリオおじさんとこで修行してこい」
息子「ええっ!! いやだよ~、ダリオおじさんキモいしぃ~」
父 「つべこべ抜かすなっ、このボンクラ息子がっ!!」
息子「だいたいオレはホラー映画なんて大嫌いなんだよっ!! ロックバンドやりてーんだよ!」
父 「なんだとっ!! 仕送り止めるぞ、ゴラァ!!」
息子「父ちゃん、それだけは勘弁……」
偉大な父親のごり押しに負けてロックバンドを諦めて嫌々ホラー映画の世界に身を堕とすランベルトくん。修業先はよりによってダリオ部屋だ。原色照明の部屋でホカ弁なんて食いたくないし、アリダばあちゃんのいびきで眠れない。アルジェントショップのレジ打の丁稚奉公なんてまっぴらごめんだ!! だいたいオレは虫が苦手なんだ!!
しかしボンボン育ちの彼は父親の言いつけに背けない。仕送りを止められたらホットドッグ屋でバイトだ。そんなのイヤだ。でもダリオおじさんみたいになるのもイヤだ。ただでさえ少ない友達がさらに減る。それにミケーレの野郎が生意気で気にくわない。アーシアはオレのこと絶対バカにしてるし。
そんな彼の思いがこの映画からは伝わってくる。父親が医者だから跡を継ぐという話は掃いて捨てるほどあるが、ホラー作家に当てはまるかどうか。同じ映画監督になりたいと思ったとしてもホラー映画は少し奇特なジャンルだ。ましてやマリオやダリオはまたその中でも独特の世界観を持っている。本当はランベルトくん『スターウォーズ』みたいな真っ当な映画を撮りたかったのかもしれない。
原色を使った照明や意味不明なカメラワークなど随所にダリオの影響が窺える。しかしやはり今ひとつ猿まねの域を出ていない。ダリオ独特の美学を感じないのだ。なんといってもゾンビ(デモンズ)の造形の下品さといったらないだろう。ゲロゲログログロ状態だ。CGのないグロ特撮は独特の生々しさがある。ゾンビたちが口から垂れ流す質の悪そうな緑色のインキとか超不器用な歯科技工士が作ったような入れ歯などアナログなメイクが妙に気持ち悪い。こんなやつらが全力疾走で襲いかかってくるのだからたまらない。目なんか無駄に光ってるし。
舞台は映画館の中。出入り口はいつの間にかセメントで固められている!! どうしてそうなったかなんてダリオ映画につっこむだけ無駄だ。パニックに陥った観客たちは座席をはがしてバリケードにする。この映画館の座席はなぜか簡単にはがせるから楽ちんだ。しかしゾンビたちは緑色のゲロをふりまきながら生存者たちに襲いかかってくる。ゾンビに噛まれた人間ももちろんゾンビだ。どうやらゲロに触ってもアウトらしいがダリオ映画らしくその辺はアバウトだ。そして女性の背中を突き破ってデモンズの大ボスが現れる。ノストラダムスは大当たりだ。でもこのボス、そのままどっかに行っちゃう。恐怖の大王というより「悪い子はいねえがぁぁ!」のなまはげみたいだった。こんなやつに滅ぼされる我々人類も気の毒だ。
全体として出来の悪いゾンビ映画にアルジェント風味を少々くわえただけという印象だ。当初、アルジェントはジョージ・A・ロメロ監督の『死霊のえじき』に参加する予定だったらしいがドル高によって出資を断念することとなってしまった。そこでしょーがないから本国で立ち上げたゾンビ企画が『デモンズ』というわけ。そーいえば終盤で劇場にヘリコプターが落下してくるシーンがある。なんでヘリが落下してくるのかさっぱり分からないが、これが『ゾンビ』でラストに飛び立つヘリだという説もあるそうな。アメリカからドイツまで飛んできたのかよ。あり得ない……。
それにしてもこの映画、無駄に音楽に力が入っている。ヘヴィメタロックがガンガンにかかってノリノリなのだ。終盤でバイクに乗って日本刀でデモンズたちを切り回していくシーンなどロック魂全開だ。心なしかゾンビたちも異常な跳躍を見せたりとあり得ない動きをする。ホラーというよりロックバンドのイメージビデオクリップみたいな映像だった。もしかしたらランベルトくんはロックを描きたかったのかもしれない。本当はホラーなんてやりたくないのだ。この映画を見てるとなぜかホラーに対する愛着めいたものを感じない。それどころかダリオに対するリスペクトすら感じられないのだ。もっとピュアな魂を感じてしまうのは僕だけだろうか。ヘヴィメタに対する熱い思いである。
やはりダリオの映画はダリオ監督じゃないとダメなんだ。ダリオの猿まねではダリオを超えることはできない。いや、べつに超えてもらわなくてもいいんだけど……。(29点)

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