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クワイエットルームにようこそ 【称号:佳作】

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28歳でバツイチの明日香は、締め切りに追われるフリーライター。同棲相手の放送作家・鉄雄とはすれ違いの日々が続き、仕事にも行き詰まった彼女は、気がつくと、クワイエットルームと呼ばれる閉鎖病棟の一室にいた。(MovieWalkerより抜粋)

なんでもかんでも病名がこじつけられちゃう現代社会においてマトモな人が精神閉鎖病棟に強制入院されてしまうことがあるかもしれない。冤罪みたいなものです。

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ワンちゃんが死んじゃえばペットロス症候群、ネットにはまればネット依存症、パソコンについていけないならテクノ不安症などよりどりみどりですから、現代社会においてみなさんひとつやふたつ精神病を抱えているんじゃないでしょうか。ブログのアクセス数が気になってしょうがないだけでもそれは立派なビョーキらしいです。いやはや、精神科の先生が儲かる時代になりました。

そんなわけでちょっとした巡り合わせの悪さからある日突然、閉鎖病棟に隔離されてしまうこともあるかもしれない。どんなマトモな人でも診断なんてつけようと思えばいくらだってつけられる。主人公の明日香は酔っぱらって睡眠薬を大量に服用してしまう。それが自殺と認定されて隔離されてしまったのだ。ちなみに強制入院とは読んで意地の如く本人の意志に関わりなく入院させられる。すべては精神科医の判断なのだ。

精神病棟だからやはり患者は奇異な言動をする。明日香は客観的に見ても正常な精神状態なので観客は彼女の視点を通して物語を追うことになる。脚本監督ともに松尾スズキだけあって病棟内の出来事をコミカルに描く。といってもかなりブラックジョーク寄りなので人権バカな人は目くじらを立てるかもしれない。重い精神病に悩んでいる患者さんや家族の人たちからすれば不謹慎に思わないでもないが、何でもかんでもタブーにしてたら何も描けない窮屈な社会になってしまう。こういう障害者ネタをコメディとして扱う場合、コメディとシリアスの匙加減が難しい。やりすぎると不謹慎で終わってしまうし及び腰だとつまらなくなる。

しかしこの映画の面白いところはその匙加減を超越してしまったところだ。コメディなのかシリアスなのかその境界がはっきりしないシーンが多い。笑えるんだけど同時に怖さを感じる。精神障害者の奇異な言動は日常ではあり得なくて笑ってしまうんだけど同時に彼らの心の闇を感じ取ることができる。
Quietroom_he_youkoso_2

ここの病棟に生きる患者の多くは見るからに精神障害者なのだが、マトモに見える人間が数人出てくる。彼女たちは自分はマトモで本来こんな病棟に入る人間ではないと思っている。たしかに見た目も小ぎれいだし会話の内容もマトモだ。だが終盤で彼女たちの心の闇を見せつけられる。精神病とは闇に心が支配されてしまうことかもしれない。

前半は我々の窺い知れない精神病棟の非日常的な日常を描いていく。このころはまだ精神障害者たちの言動を茶化したコメディ。それらは明日香の視点で描かれていく。しかし後半から今度は視点主人公だった明日香の内面に入っていく。観客は明日香のことを正常な精神状態の持ち主だと思っている。彼女は単に間違われてここに運ばれたのだと。しかし後半の展開はやたらと残酷だ。

痛々しい離婚をしたばかりの内田有紀さんがこれまた痛々しい女を演じている。過去のさわやかなアイドルイメージを全否定するような体当たり演技だ。元夫の不幸をきっかけに仕事にも恋愛にも行き詰まった彼女の神経が徐々に病んでいく。不安や焦りなどネガティブな心理状態がつづけば飲酒量も増えるし睡眠薬がなければ眠れなくなる。やがては子供の妄想を抱いたり徐々に神経が病んでいく。もちろん周囲の人間は理解してくれない。この痛々しさが笑えない笑いを引き出している。

いままで丹念に積み重ねられてきた彼女へのイメージが一気に崩される。その破滅的で自虐的な衝動は立派な精神障害だ。しかし誰もが持ちうる一面であり、それを思うと観客自身も病棟の中の患者たちとは紙一重の違いではないかと思わされる。

現代は価値観が多様化しすぎている。情報があふれていてそれらを一つに絞り込むことは難しい。だからこそ恋愛や仕事さらには結婚に行き詰まる人が増えている。行き詰まりはストレスに直結する。過度なストレスは精神障害の引き金になりうる。「死にたいな」とチラリとでも思ったらそれは精神病と診断されるかもしれない。

この主人公の痛々しさがどことなく『ストロベリー・ショートケイクス』の女たちに似ている。そういえば明日香のルームメイトを演じていた中村優子さんもこれに出てた。同情も共感もできないんだけど放っておけない危うさが味になっている。(64点)

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コメント

こんにちは。
TBありがとうございました。

>この主人公の痛々しさがどことなく『ストロベリー・ショートケイクス』の女たちに似ている。そういえば明日香のルームメイトを演じていた中村優子さんもこれに出てた。同情も共感もできないんだけど放っておけない危うさが味になっている。

私も見終わったときに同じような感想を抱きました。
そしてラストは何故か、清清しさを感じました。

投稿: hyoutan2005 | 2007年11月 3日 (土) 13時54分

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