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パンズ・ラビリンス 【称号:良作】

Pans_labyrinth
1944年、スペイン。少女オフェリアは内戦で父を亡くし、母の再婚相手である大尉と暮らすことに。彼の残忍な性格に怯えたオフェリアは、森でいたずら好きの牧神パンと出会い、魔法の王国に行くための3つの試練を受ける。(MovieWalkerより抜粋)

『千と千尋の神隠し』とか『不思議の国のアリス』っぽい童話だと思っていたら、「オイオイ、そこまでするか」って感じのハイパーダークファンタジー。ピュアな子供に見せてその反応を窺ってみるのも面白いかも……ってオイ!(笑)

舞台は1944年のスペイン。レアル・マドリードの大ファンだったフランシス・フランコのファッショ政権下だったスペイン内戦時代だ。世界が大戦をくり広げていたころ彼らは内戦の真っ最中だったんですね。本作はおぞましい暗黒時代に戦う大人たちとファンタジーの世界にはまりこんでいく一人の少女の姿を対比的に描いていく。

あのアドルフ・ヒトラーと盟友だったフランコ政権だけあって彼らのやり方はナチスの冷酷さそのままだ。本作はポスターのイメージからファミリーで楽しむファンタジー映画をイメージしてしまうが、大人はともかく何の心の準備をしていない純真なお子様にはちょっときついだろう。

まずはファンタジーらしからぬ数々の残酷シーン。スプラッターほどでないにしてもこういう拷問的描写が神経に一番障る。冒頭で悪役のヴィダル大尉が何の罪もない農夫親子をサディスティックに惨殺するシーンなどファンタジーシーンに対してのギャップが激しい。ドイツにしろハンガリーにしろイタリアにしろファシズムによる暗黒時代は弾圧と拷問に国民は怯えながら暮らしていた。どこもこんな感じだったのだろう。当時の日本だって似たようなものだ。

大人たちの狂気や恐怖はダイレクトに子供に伝搬する。冷酷無比を絵に描いたようなヴィダル大尉へのもとへ母親と一緒に身を寄せた少女オフェリアにとっておとぎ話とは恐怖から逃避する唯一の手段だったのだろう。おとぎ話を卒業した大人たちは酷薄な現実世界を直視し体感しなければならない。しかしファンタジーへの逃避が果たして救いに結びつくのかどうか。この映画はファンタジーが現実を中和させているというよりむしろ現実がファンタジーを蝕んでいるのです。

大人たちが担当する現実世界も残酷だが、オフェリアが関わるファンタジー世界も健全な道徳的絵本に出てくるようにキレイなもんじゃない。コケと泥に侵された暗黒の森だったり、絶望と苦痛と死しかイメージできない地下牢だったりする。現実も地獄なら逃避先も地獄。タコ部屋でひどい目にあったから時津風部屋に逃げ込むようなものです。

そこでオフェリアはいくつかの試練を試される。それにしても笑えるのは「絶対に食うなよ試練」だ。絶望的な地下牢だし目のない化け物が座っているしどうみても食欲のわかない状況で妖精たちが必死に止めているにも関わらず食ってしまえる根性にはギャル曽根ちゃんもビックリだ。そのあと怪物が眼球を手のひらにめり込ませて追いかけてくるシーンはお子様にとってはトラウマになりそう。世界一怖い「食い逃げシーン」である。お見事。

冒頭から終盤にかけては現実とファンタジーは別個に展開していくがラストになって一つの物語として収束していく。この映画、童話的体裁のくせに女子供に容赦しない。果たしてこの衝撃的なラストはオフェリアにとってハッピーなのか最悪なのか。救いがあるようでないような、不快感にも似たもどかしさを残しながら幕を閉じる。

アカデミー賞3部門受賞しただけあって映像や演出は非常にレベルが高い。特殊撮影を駆使したダークなファンタジーの映像もさることながら、リアリティにこだわった暗黒時代の描写も秀逸で悲惨な戦争映画としても優れている。また現実とファンタジーの乖離具合も絶妙です。いわゆる「本当は怖い大人の童話」的な湿ったグロさを楽しめる1本といえるでしょう。(72点)

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コメント

トラックバック、ありがとうございました。
『パンズ・ラビリンス』、とにかく見終わった後、心にズンと重いものが残る、ワクワク楽しいだけの「お手軽ファンタジー」とは一線を画す、ある意味「問題作」です。

投稿: sokyudo | 2007年10月 8日 (月) 09時26分

TBを確認して、こちらへ来ました、はじめまして^^!

現実がファンタジーを蝕んでいる…そうですねー
幻想が救いといえるか感想が分かれそうですね。

で、時津風部屋って。。(^^;)アップ・トゥー・デートな
譬え、でもそうかも知れんなー。

投稿: ysheart | 2007年10月 8日 (月) 09時43分

●syokudoさん
コメントありがとうございます。たしかに心に重いものが残りました。ファンタジーよりもむしろリアリティを感じましたね。ファンタジーは戦争の狂気から逃避する少女の妄想だった気がします。これはこれで本当に救いがありませんね。

●ysheartさん
こちらこそよろしくお願いします。ブログを立ち上げてまだ日が浅い初心者です。僕は幻想が少女の悲劇を象徴していると思いました。なんというかお腹をすかした一文無しの少女が彩り鮮やかなケーキだとイメージして泥を食べているようなそんな気がしました。

投稿: 管理人(古居メイソン) | 2007年10月 8日 (月) 12時02分

初めまして。「紫@試写会マニア」の紫です。
TBありがとうございました。

>世界一怖い「食い逃げシーン」である。お見事。

ちょっと(実はかなり)ウケました。・・・失敬。
文章とか表現とか、メイソンさんはかなり楽しい方(気に障ったらごめんなさい)、とお見受けしました。

またお邪魔させて頂きます、今後とも宜しくお願い致しますね。

投稿: 紫(むらさき) | 2007年10月 9日 (火) 00時41分

紫さん、はじめまして!
試写会マニアってあたりがすごいですね。僕は試写会がなかなか当たりません。ただ試写会って早めに現地に行かないといけないという切迫感があって苦手かも。でもいち早く映画が見られるという優越感は何にも代え難いですよね。

あの食い逃げシーンは怖かった。あの状況で食おうとするあたりあの少女は相当におなかをすかせていたんでしょうね。妖精たちを追い払う顔が意地の悪いおばちゃんみたいで笑えました。

投稿: 管理人(古居メイソン) | 2007年10月 9日 (火) 10時53分

はじめまして。湾岸ブッチです!
トラックバックありがとうございます!

投稿: 湾岸ブッチ | 2007年10月 9日 (火) 21時53分

はじめまして。Cnoteのkenkoと申します。
トラバありがとうございました。

>絶対に食うなよ試練

ダメだって言ってるのに、やっぱり食べちゃうオフェリアちゃん・・・あそこだけ妙に子供らしくて可笑しかったですね(笑)

またお邪魔しまーす♪

投稿: kenko | 2007年10月10日 (水) 20時10分

おじゃまします。先日はTBどうもありがとうございました。

後味もよくはないですし、好き嫌いが分かれそうな作品でしたが(グロシーンが苦手な人にはさぞかしきつかったことでしょう……)、心に残る1本だったと思いました。
オフェリアがつまみ食いをするシーンでは、私もお腹がすいていて山盛りの食べ物が気になってしまいました。でも、私は逃げ足が遅いのできっとペイルマンに負けちゃいます……。

投稿: YUMIKA | 2007年10月12日 (金) 15時30分

トラバさせてもらいますね~♪

投稿: ジョニーA | 2007年10月13日 (土) 04時38分

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これだけは劇場で観ておきたいと思い、念願の鑑賞と相成りました。 だから少女は幻想の国で、永遠の幸せを探した。 「パンズ・ラビリンス」(2006年製作) 公式サイトはこちら。 監督:ギレルモ・デル・トロ 製作:アルフォンソ・キュアロン&ベルサ・ナヴァロ&ギレルモ・デル・トロ他。 脚本:ギレルモ・デル・トロ 撮影:ギレルモ・ナヴァロ プロダクションデザイン:エウヘニオ・カバイェーロ 衣装デザイン:ララ・ウエテ 編集:ベルナ・ビラプラーナ 音楽:ハビエル・ナバレテ ... [続きを読む]

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いい歳をして、まだそんな本を読んでいるオトナや、トラウマになろうとも、やっぱりコドモにも観てほしいエグいファンタジー。 少女オフェリアは、めったに笑顔を見せてくれない。 それ故、彼女の笑った顔は、心に残る.... [続きを読む]

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シネ・リーブル神戸で観て来た。遅まきながら、ポイントカード会員にもなって来たぞっ! 次回、無料サービスで観る記念すべき1本は、『自虐の詩』になりそうだなぁ〜〜〜〜〜。 [[attached(1,center)]] この映画、劇場予告で観た時は、もっとファンタジー・シーン満載の、おとぎ話風ストーリーなのか なぁ〜〜???って漠然と思ってた。しかししかし、意外や意外。これが相当シリアスで重いテーマ に貫かれた、リアルな内戦を描いた実録風な作品だった!!ファンタジーなんて20%っくら..... [続きを読む]

受信: 2007年10月13日 (土) 04時36分

» パンズ・ラビリンス [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
 『だから少女は幻想の国で、 永遠の幸せを探した。』  コチラの「パンズ・ラビリンス」は、フランコ独裁政権下のスペインが舞台のPG-12指定のダーク・ファンタジーで、10/6公開となっていたのですが、観て来ちゃいましたぁ〜♪  既にご覧になられた方の間では、かな...... [続きを読む]

受信: 2007年10月13日 (土) 23時02分

» パンズ・ラビリンス [Akira's VOICE]
哀しみと希望が交差するダークファンタジー。 [続きを読む]

受信: 2007年10月15日 (月) 15時40分

» 「パンズ・ラビリンス」(2006・墨西・西・米) [MY HIDEOUT〜私の隠れ家〜]
全国ロードショー中です。"ELLABERINTODELFAUNO","PAN'SLABYRINTH"監督、脚本・・・ギレルモ・デル・トロ出演・・・イバナ・バケロ、セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ、ダグ・ジョーンズ、アリアドナ・ヒル、アレックス・アングロ、エウセビオ・ラサロ、パコ・ビダル、...... [続きを読む]

受信: 2007年10月17日 (水) 00時31分

» 【劇場映画】 パンズ・ラビリンス [ナマケモノの穴]
≪ストーリー≫ 1944年、内戦終決後のスペイン。父を亡くした少女オフェリアは、身重の母と共にゲリラが潜む山奥で暮らし始める。そこは母が再婚したフランス軍のビダル大尉の駐屯地だった。体調の思わしくない母を労りながらも、冷酷な義父にどうしても馴染めないでいた彼女の前に妖精が現れ、森の中の迷宮へと導く。そこではパン(牧神)が王女の帰還を待っていた。オフェリアは魔法の王国に戻るために3つの試練を与えられるのだった。(goo映画より) すごく楽しみにしていた映画をやっと観てきました。 いい意味でも... [続きを読む]

受信: 2007年10月17日 (水) 22時20分

» パンズ・ラビリンス [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
無垢で孤独な魂は、地獄に天国を見出そうとして、闇の悪魔を光の天使へと反転する。哀しい瞳をした少女の前に現れたのはパン(牧神)。いたずら好きの彼は戸惑う少女にこう囁いた。「あなたは、長い間捜し続けていた魔法の王国のプリンセスに違いない。 それを確かめるた...... [続きを読む]

受信: 2007年10月18日 (木) 22時22分

» 「パンズ・ラビリンス」 [club for strangers]
「パンズ・ラビリンス」 話題の映画。ハリーポッターなどは意地でも観たくない僕だが [続きを読む]

受信: 2007年10月20日 (土) 18時08分

» パンズ・ラビリンス [to Heart]
だから少女は幻想の国で、永遠の幸せを探した。 原題 EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH 製作年度 2006年 製作国・地域 メキシコ/スペイン/アメリカ 上映時間 119分 監督 ギレルモ・デル・トロ 脚本 ギレルモ・デル・トロ 音楽 ハビエル・ナバレテ 出演 イバナ・バケロ/セルジ・ロペス/マリベル・ベルドゥ/ダグ・ジョーンズ/アリアドナ・ヒル/アレックス・アングロ 舞台は1944年のスペイン。 内戦終結後もフランコ政権の圧政に反発... [続きを読む]

受信: 2007年10月26日 (金) 22時17分

» パンズ・ラビリンス [空想俳人日記]
尾てい骨 頭蓋骨から 心臓へ   なんだか久しぶりです、ナメクジに尾てい骨をむじむじ齧られるような感触の映画を観たのは。しかも、ギリアム監督の「未来世紀ブラジル」のときのような、頭蓋骨の内側から除夜の鐘をくわんくわん鳴らされた驚愕も味わいました。ちょっとぞ... [続きを読む]

受信: 2007年10月27日 (土) 14時40分

» 映画「パンズ・ラビリンス」 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:Pan's Labyrinth この映画でのPG-12の意味は、成人保護者同伴で小学生を映画館に連れて行って、是非観せてあげてくださいという意味に違いない・・教育指導的お伽噺・・ オフェリア(イバナ・バケロ)は、身重の母カルメン(アリアドナ・ヒル)に連れられ... [続きを読む]

受信: 2007年10月28日 (日) 14時19分

» パンズ・ラビリンス、或いは、解離性障害 [気ままにランダムハート]
情けないまでに、いきなりの号泣をしてしまった。 [続きを読む]

受信: 2007年10月28日 (日) 18時55分

» ★「パンズ・ラビリンス」 [ひらりん的映画ブログ]
今週の週末レイトショウは、オスカー3部門受賞の話題作。 といっても、撮影賞・美術賞・メイクアップ賞ですが。 ともかく、予告編見る限りは、ダーークなファンタジーな感じがプンプン。... [続きを読む]

受信: 2007年11月 4日 (日) 03時06分

» 映画『パンズ・ラビリンス』 [trivialities ]
【10月7日特記】 映画『パンズ・ラビリンス』を観てきた。 単なるファンタジーだと思って見に行くと、あるいはスペイン内戦を巧みに織り込んだファンタジーだ、ぐらいの認識で見に行くと足許掬われるぞ。 これ... [続きを読む]

受信: 2007年11月 8日 (木) 10時19分

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